個人資産代替率

要旨

退職後の生活には、公的年金のほかに、退職直前年収の約36%に相当するお金が、必要となります。

退職後の年間生活費は、退職前の何割くらい必要になるでしょうか、その内のどれだけを自身の資産で賄う必要があるでしょうか。これらは、退職年齢や、退職後の生活水準、現在の収入など、様々な要因によって異なります。

年収が高い人ほど、退職後、公的年金以外に必要とする生活資金額は多くなるものです。

相互に関連する退職準備の4つの指標

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初めての場所で道に迷ったことはありませんか?そもそもどこに向かっているかが分からなければ、行き先に辿り着くことなどできません。退職に向けた資産形成についても同じです。目的が明確でない限り、正しい道を進んでいるかどうかを判断することはできません。

フィデリティでは、問題をわかりやすくするために支出に関する幅広いデータを分析しました。その結果、ほとんどの人の場合、退職後も退職前と同じような生活水準を維持するためには、退職直前年収(税引前)の70%~80%を退職後の年間収入として確保する必要があることが分かりました(注記1)。この70~80%を目標代替率と呼んでいます。

退職後に必要なお金が、退職前よりも少ないのはなぜでしょうか?退職後は通常、退職後の生活のための資産形成をする必要がなくなります。勤労収入そのものも少なかったり、無くなったりしていますから税率は低くなるでしょうし、様々な生命保険に加入する必要もなくなります。通勤用の服装といった日々の出費も減少します。また、住宅ローンの残りを完済する人もいるでしょう。

一方、そのお金はどうやって工面すればいいでしょうか?幸いにも、全てを自分の資産で賄う必要はありません。生活費の一部は公的年金で賄うことが可能です―所得の低い人は所得の高い人に比べて相対的に公的年金の比率が高くなります(下図を参照)。

フィデリティの分析によると、退職直前の年収が500~950万円の人の場合、退職直前の年収(税引前)の約36%を個人の資産で賄うように計画を立てるべきだとわかりました。もちろん、それぞれの年収、退職年齢、及びその他の要因でも、正確な数値は変わってきます。

年収が大きく影響する

退職直前の年収の何割を退職後の年間必要額として確保すべきかは、その年収によって大きく変わってきます。年収の高い人の場合、現役時代の生活費そのものを年収に対する比率でみると比較的小さくなるため、退職後も退職前と同じような生活水準を維持するとすれば、目標代替率は低くなります。

下図に示されているように、年収が500万円の人が、退職後も退職前と同じような生活水準を維持するためには、退職直前年収(税引前)の約75%を退職後の年間収入として確保する必要があるでしょう。一方、年収が900万円の人は、退職直前年収(税引前)の68%近くを退職後の年間収入として確保する必要があると考えられます(注記2)。
 

退職前の年収によって、
その何割を退職後の年間収入として確保する必要があるかが変わってくる。
また、それをどのように工面するかも変わってくる

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(注)総務省統計局、全国消費実態調査(2014年)、個人資産代替率のうち8%に相当する退職一時金(退職直前年収の2倍相当)を含むと想定。

公的年金は退職後年収の大きな柱となっていますが、年収の低い人の場合、年収の高い人と比べてその割合が特に高くなります。上図に示されているように、年収が500万円の人の場合、公的年金の比率は退職直前年収の約42%を占め、残りは個人の資産で賄われます。年収700万円の人の場合、公的年金給付は退職直前年収の約36%を占め、年収900万円の人の場合、それは31%に過ぎません。

退職直前年収に占める公的年金の割合は、年収水準によって変わってきますが、2年分の所得に相当する退職一時金を受け取ると仮定した場合、退職直前年収に占める個人資産からの引き出し額の割合は年収にかかわらず、約36%で一定となっています。

退職時期によっても大きな差が出る

退職年齢が遅くなればなるほど退職年収に占める公的年金の比率は高くなる

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(注)総務省統計局、全国消費実態調査(2014年)。退職直前年収700万円を想定。基本シナリオは、退職年齢を67歳と想定。

退職後の生活において、退職直前年収の何割を個人資産で賄う必要があるかは、退職年齢によって大きく変わってきます。ほとんどの人は、年金受給資格年齢(現在は65歳に向けて引き上げています)で、年金を受け取ることが可能ですが、その年齢に達する前に年金受給を開始した場合、年間受給額は減少します。一方、受給開始時期を遅らせた場合(70歳まで)、年間受給額は増加します。

退職時期が早ければ早いほど、個人資産に依存する割合が高まります(図表参照)。基本シナリオでは67歳で退職した場合、退職直前年収の36%を個人資産からの引き出しで賄う必要があります。仮に62歳で退職した場合、その割合は40%に上昇します。一方、70歳まで働いた場合、その割合は29%に低下します。早い時期に退職して公的年金受給を始めれば、受給額は割り引かれ、退職までの運用期間が短くなり、生活費を確保する必要のある退職後の期間が長くなります。反対に、退職時期を遅らせれば、公的年金の受給額は割り増しされ、退職前の運用期間が長くなり、退職後の期間が短くなります。
 

個人資産代替率に関する注記

本サイトに記載された内容は情報提供を目的としており、特定の投資家の投資ニーズに合わせたものではありません。

 

  1. フィデリティでは、総務省統計局の全国消費実態調査2014年の調査に基づき、55歳~59歳と65歳以上の家計消費データを比較・分析し、退職後も退職前までと同様な生活水準を維持するために必要な個人資産代替率を36%と算出しています。67歳で退職し、その年齢まで公的年金の繰り下げ受給をする、単一収入の家計を前提としています。
  2. 36%の個人資産代替率の計算は、総務省統計局の全国消費実態調査2014年に基づいており、退職直前年収で500万円~950万円の範囲では有意である結果となっていますが、退職直前年収が500万円~950万円の範囲外の場合、妥当性が低くなります。退職年齢、退職後の生活水準、これまでに作り上げた資産、及びその他の要因によって、36%以上の引き出しを可能にする資産が必要となる場合と、それ未満の資産で済む場合があります。36%の個人資産代替率は、67歳で退職し、その年齢から公的年金を受給することを前提としています。公的年金の受給年齢は65歳で、60歳からの繰り上げ受給と70歳までの繰り下げ受給の枠組みは現在のままとします。67歳になる前に退職し、年金を請求する場合には、想定される公的年金の受給額が少なくなること、退職前の投資期間が短くなること、生活費を資産からの引き出しで賄う必要のある退職後の期間が長くなることなどにより、この個人資産代替率は高くなります。同様に、67歳よりも遅くに退職した場合、これらの要因が逆に働き、繰り下げ受給による公的年金受給額が増えるため、この個人資産代替率は低くなります。退職年齢が65歳の場合、この個人資産代替率は退職直前年収の39%と推計され、退職年齢が70歳の場合、31%と推計しています。年収倍率は個人資産代替率と退職年齢の両方を要件としているため、退職年齢が早い場合、想定される公的年金の受給額が少なくなり、退職後の期間が長くなることにより、この数値は高くなります。同様に、退職年齢が遅い場合、この目標は低くなります。退職年齢が65歳の場合、この目標は退職直前年収の8倍に、退職年齢が70歳の場合、5倍と推計しています。
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フィデリティ投信株式会社
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