フィデリティの「退職準備の指標」、その全体像

退職までの道のりは紆余曲折があって人それぞれに異なるものです。とはいえ、われわれは、皆、「退職後の生活のためにはどれくらいお金が必要だろうか」という、ある意味で捉えどころのない、しかし、共通の課題に直面しています。

もちろん、正確にはこの質問に誰も答えることはできません。人生そのものや金融市場にこの先何が起きるかを知ることは誰にもできないからです。それでもその準備に着手しようとすれば、まず自分の現在の状況を知る必要があります。

相互に関連する退職準備の4つの指標

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ここでは資産形成比率、資産形成の道しるべとなる年収倍率、退職後の収入を個人資産にどれだけ依存するかの個人資産代替率、そして持続可能と思われる引出率の4つの主要な指標を提示しています。これらを使って、みなさんの退職に向けたロードマップを一緒に作っていくことにしましょう(注記1)。

4つの指標は全て相互に関連しています。その進捗状況を確認しながら退職に備えた資産形成を行うためには、それぞれの指標がどのように関連しているかを理解することがまず重要です。

それぞれの指標の詳細な説明も用意しています。また、条件が変わることで、それぞれの指標にどういった影響があるかをわかりやすく説明するツールも用意しています。

ここでは退職に関する4つの共通の課題とそれぞれに関連する経験則を挙げています。もちろん、個人によりニーズが異なりますから専門家に相談する必要がありますが、老後に備えた資産形成を行う上で、以下の指標を出発点として考えてみましょう。

フィデリティの退職準備のための経験則

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年収倍率: 退職直前の年収の何倍の資産を用意すればいいかの指標
個人資産代替率: 退職後も退職前と同じ水準の生活を維持することを前提にして、公的年金に加えて個人の資産から賄う必要のある資金額の退職直前年収に対する比率
資産形成比率: 毎年資産形成に必要とする金額の年収(税引前)に対する比率
持続可能な引出率: 生涯にわたって資産が枯渇することのないと予測される引出額の、退職時点の資産額に対する比率

退職後の生活を賄うにはどのくらいの資金が必要か?

ほとんどの人にとって、公的年金が退職後の生活における収入の柱ですが、不足分は個人の資産からの引き出しで賄う必要があります。しかし、どれくらいの個人の資産が必要でしょうか。フィデリティの経験則によると、公的年金とは別に、退職直前年収の36%を個人資産からの引き出しで賄う必要があります(注記2)。

退職までにどれくらいの資産を用意すればいいのか?

これは難しい質問です。特に退職がまだ遠い先の人にとって正確な額を見極めるのは困難でしょう。退職に向けた資産形成目標を定め、その進捗状況を確認する簡単な方法としては、年齢毎の年収倍率をみる方法があります。年収倍率は資産形成の途中経過として計算することもでき、その時点で退職後の生活に用意できている資金がその時点の年収の何倍であるかで表わされます。フィデリティの分析では、30歳で年収の1倍、40歳で2倍、50歳で4倍、60歳で6倍、そして67歳の退職年齢で7倍の年収倍率を目標とすることが望ましいとみています(このほかに退職直前年収の2倍に相当する退職金を受け取ることを前提にしています)(注記3)。

退職に向けて毎年どのくらい資産形成をすべきか?

退職後も退職前と同じような生活水準を維持するためには、働いている期間において年収(税引き前)の少なくとも16%を毎年資産形成に回すべきだと考えています(注記4)。少し高いように思われるかもしれませんが、様々な口座における全ての資産形成に加え、確定拠出年金であれば事業主掛金分も含まれます。もちろん、年代によってはこの金額を資産形成に回すことはできないときがあるかもしれませんが、退職までにその不足分を補う方法を見つければいいのです。

どうすれば退職後の生活で資産を長続きさせられるか?

多くの退職者が直面している最も難しい課題の1つは、退職後の生活用にどのくらいの資金を資産から引き出せばいいかという点です。資産を取り崩しすぎると、途中でお金が足りなくなる恐れがあります。取り崩しを抑えすぎると、望んでいる退職後の生活を送ることができないかもしれません。ここでは、引き出し額を退職時点の資産の3.9%として金額を決め、その後インフレに合わせてこの金額を増やしていくことにします(注記5)。

退職年齢と公的年金の受給開始時期が重要

これらの考え方は多くの要因に左右されますが、特に退職年齢が重要なカギとなります。日本では平均退職年齢が60歳となっています(注記6)。現在、公的年金を満額受け取れる年齢は65歳に移行途中です。もちろん、繰り上げで60歳、繰り下げで70歳と、公的年金の受給開始を請求することができます。繰り上げ受給の場合、年間の受給額は毎年6%少なくなり、繰り下げ受給開始の場合、年間の受給額は70歳まで毎年8.4%多くなります。また、あわせて退職する時期を遅らせることができれば、退職に向けた資産形成の期間をより長くでき、退職後に資産を取り崩す年数を減らすこともできます。

したがって、何歳で退職するかによって、必要な資産額が変わってきます。このことはその他の指標(資産形成比率、年収倍率及び持続可能な引出率)にも影響を与えます。これら全ての指標はお互いに関連しているのです。

退職後の生活でどのくらいの資金が必要なのかは、なかなかわからないものですが、退職したい時期については何らかの考えをお持ちではないでしょうか。公的年金を満額受け取れる年齢よりも早く退職するつもりであれば、退職年齢62歳の指標を参考にしてください。70歳まで働くつもりであれば、70歳の指標を参考にすることができます。

退職年齢が、退職後の生活に必要な資産額や引き出し額に与える影響

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(注)25歳からそれぞれの退職年齢まで準備を行い、年収は300万円から950万円の層を想定。計算方法及びその他の前提については、注記を参照ください。

留意点

それぞれの指標の前提では、個人年金は想定しておらず、退職まで雇用が継続されていること、年収の2倍相当の退職金を受け取れること、賃金が一定率で伸びること、それに合わせて資産形成額が増えることなどを前提としています。もちろん、個人ごとに事情が異なり、その事情も時間とともに変化することを前提に、分析においては“より保守的な計画”を想定しています。具体的には、これらの指標に関して、幅広い投資収益率のシナリオを使ってストレステストを実施し、10の市場環境のうち9つの例でこれらの指標が上手く機能することを目指します(手法やその他の重要な前提については、注記を参照ください)。

「フィデリティ退職準備の指標」の考え方に関する注記:

本サイトに記載された内容は情報提供を目的としており、特定の投資家の投資ニーズに合わせたものではありません。

  1. 個人資産代替率、年収倍率、資産形成比率、持続可能な引出率などの指標の算出は、株式/債券/キャッシュの資産配分ポートフォリオをもとに、過去の市場データを前提にした様々な市場環境下で想定されるリターンやボラティリティを使ったシミュレーション結果に基づいています。このシミュレーションでは、株式/債券/キャッシュの3資産を一般的なターゲット・デート・ファンドの株式配分比率(退職など目標時期が近づくに従ってリスク性資産の配分を減らす)に沿った形で年齢別に変化させ、毎月末にリバランスしながら様々な市場環境下で起こりうるリターンやボラティリティを検証しています。それぞれのデータは、1990年から2017年までの年間データを、ブルームバーグ及びデータストリームから入手しています。具体的には、株式(国内及び海外)はMSCI オール・カントリー・ワールド・トータル・リターン・インデックス、債券はバークレイズ総合トータル・リターン・インデックス(バリュー、ヘッジあり・日本円ベース)、短期金融資産は3ヶ月 LIBORインデックスを使っています。
    算出の前提条件として、退職年齢(67歳)、人生設計年齢(93歳)、実質賃金の伸び(年1.8%)、個人資産代替率(36%)、2年間の年収に相当する退職一時金の受取、等を設定し、資産形成期間中における80%の信頼度と、退職後(資産の取り崩し)の期間中における90%の信頼度を得る結果となっています。
    全ての計算は理論的なもので、算出された各数値は将来の結果を保証するものではありません。特定の投資リターンを反映しているものではなく、または個人の特定の口座を考慮しているわけでもありません。年収倍率は、参考情報の1つとして、退職後年収を考える上で参考にするものとご理解ください。銘柄の入れ替え(リバランス)に伴い発生する取引コストは想定されておらず、手数料も考慮されていません。これらのコスト・手数料を反映した場合、ポートフォリオのリターンは低下します。資産配分や分散投資は利益を約束するものではなく、損失の回避を保証するものでもありません。全てのインデックスは運用対象商品ではなく、インデックスに直接投資することはできません。理論的な計算では、手数料などの費用が反映されておらず、実際の投資リターンは通常、その分低下します。また、税金も考慮されていません。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
  2. 個人資産代替率とは、退職後の生活に必要な費用(退職後年収)として公的年金以外に個人の資産から充当する金額の、退職直前年収に対する比率です。総務省統計局の全国消費実態調査2014のデータに基づいて算出され、退職年齢(67歳)、人生設計年齢(93歳)、2年間の年収に相当する退職一時金の受取などを前提にしています。
  3. フィデリティでは、退職に向けた現在の退職準備額と、現在の年収を比較する「年収倍率」という考え方を使っています。足元の年齢の年収倍率は現在の資産額をもとに計算されますが、いくつかの前提を置いて、将来のそれぞれの年齢に応じた一連の年収倍率も算出しています。退職年齢(67歳)、実質賃金の伸び(年1.8%)、人生設計年齢(93歳)、2年間の年収に相当する退職一時金の受取などを前提にしています。退職直前の2倍の退職一時金を受け取る前提は、フィデリティ退職・投資教育研究所が2015年に実施した「退職者8000人アンケート」の結果(退職前の年収平均が810万円、受け取った退職一時金の平均が1747万円)をもとに設定しています
  4. フィデリティでは、当社の分析に基づき、資産形成比率として年収(税引前)の16%を提示しています。25歳から退職年齢である67歳まで、この金額を拠出し、67歳から93歳までの退職期間において、個人資産代替率として、退職直前年収の36%分を創り出すと想定しています(退職時に2年分の退職一時金を想定し、その他の終身年金などの収入がないことを前提にしています)。
  5. 持続可能な引出率は、退職時点の資産残高に対する比率として年間の引出額を算定する際に活用されます。注記1の分析を行って90%の可能性で資産が枯渇しない引出率比を算出しています。その生涯にわたって引出額はインフレ率で調整され計算されます。退職年齢67歳で、93歳までの人生設計を前提とすると、持続可能な引出率は3.9%と推計しています。それぞれの数値は、特定のユーザーの特別な状況、特定の口座、あるいは特定の投資または投資戦略を考慮しているわけではありません。退職年齢、平均余命、市場環境、退職後の生活水準、及びその他の要因は個々によって異なるため、それぞれの引出額がこれより多かったり少なかったりする場合があります。
  6. フィデリティ退職・投資教育研究所が、2015年に8,000人の退職者を対象に行った調査によると、退職者の65.1%が60歳で退職し、退職一時金を受け取ったと回答しています。
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フィデリティ投信株式会社
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